3-1 算数「分数を使った大きさの表し方を調べよう」

 3校時,3年1組を覗くと,全員が挙手をしているところでした。教科書の問題を解いて答えを確認していたようです。「ノートに①と書きなさい」「③の答えを書きなさい」「2/5と書いた人手を挙げなさい」「④を指さしなさい」「④を微音読します」・・・・子どもたちの様子を見ながらO先生はテンポ良く指示をしていきます。
 
 子どもたちは指示に素早く対応して書いたり,読んだりしていきます。こうやって作ったノートは,字のうまいへたの違いはありますが見事に同じに整理されています。この同じというのがポイントです。適用の段階では学習した解き方を使って正しくできることが大切です。O先生の目標は常に「全員が出来る・分かる」ですから,同じように出来ない子を確認して丁寧に指導するために,このようにしているのです。
 
 このような学級全体での取組は解き方や考え方を作り上げるときにも使われます。適用の問題に出てきた「5/5=1」と「6/6=1」を取り上げ,「何か気付くことはないですか」と問いかけます。
 
 発表内容を取り上げながら,「どうやら分母と分子が同じ数の時は1になるようだ」という見通しが立ったところで,「10/10=?」「200/200=?」「?/8=1」・・・・と帰納的に見通しの確からしさを高めていきます。その過程ですべての子どもたちの頭の中に「a/a=1」が落とし込まれていきます。教師主導で学級全体で取り組むことによって可能になる授業です。
 私はこのような教師主導の授業を「ケの授業」と呼んでいます。子どもの主体的・協働的で思考力や表現力の育成を重視した授業を「ハレの授業」としているのに対してです。「ハレの授業」はペアやグループでの話し合いなどを取り入れ,一見子どもたちが主体的に・協働的に考えているように見えますが,教師の見取りの力がないと,グループ内の出来る子の出した解き方に本当は分からないのに「それがいい」と迎合してしまい,適用問題が解けないという結果になることも多いと言われています。子どもたちを見取る力を高めるためにも,今日のような「ケの授業」も大切にして欲しいと私は考えていて,先生方には,両方とも大切なので,バランスよく取り入れていってくださいとお願いしています。「正解だった人,手を上げなさい」という指示に対して,胸を張って手を挙げている3年1組の子どもたちを見て,分かる・出来るを保障することこそ私たち教師の責務だと改めて実感したのでした。